海外製の量産型ガラスペンを使っていて、どうしても気になってしまうのは、その書き心地。
国内ガラス工房製のような、滑らかな書き心地は厳しいとしても。
鉛筆やシャープペンのようなサリサリ、スルスルというような書き心地は期待したいところです。
Favorite Noteでもお取り扱いしている海外製のガラスペン、「ピエール・カルダン Duo3」。
基本的には、サリサリというような比較的摩擦感少なめのアイテムです。
しかし、中にはガリガリという紙を削るような書き心地のペンが、入っていることがあります。
今回は、そうしたガリガリのガラスペンを、ペン先の様子を確認しながら、実際に研磨してみようという企画です。
どうやって研磨すれば良いのでしょう?
やみくもに削ってみるよりは、まずはネットで情報収集。
…と思っても、参考になる情報はなかなか見つかりません。
むしろ、ガラスペンに付いていた紙やすりで削ったら、「字が太くなった」、「インクが出なくなった」など。
失敗してしまったという例が多々ありました。
そんな中、正に知りたかった詳細な情報を公開されているのが、哲磋工房様。
ガラスペンの原理や基本構造といった基礎知識に加え。
ペン先を研磨する際の手順、使用する紙やすりまで、詳しく解説されています。
ガラスペンのペン先研磨にご興味をお持ちの方は、ぜひ哲磋工房様の動画をご覧下さい。
(これ以降の研磨方法、使用する紙やすり等の情報は、全て哲磋工房様の受け売りです…)
哲磋工房 / ガラスペン研究部②「書けないガラスペン削ってみやー」の回
巷に増えてきた量産型ガラスペン。書けるものも書けないものもたくさん…。
何故書けるのか。何故書けないのか。どんなペン先なら書けるのか。
買ってみたら紙やすり付きだったガラスペンを実際に削ってみました。
作成した動画を友だち、家族、世界中の人たちと共有…
今回研磨するガラスペンは?
今回研磨するガラスペンは、「ピエール・カルダン Duo3 キャンディーレッド」の一本。
基本的には、サリサリという多少の抵抗感ある程度。
しかし、軸を回して確認していくと、一部でガリガリとした紙をひっかくような書き心地があります。
そこで、デジタル顕微鏡でペン先を確認していくと…。
ペン先のひだの峰の部分、その先端でペン先と交わる辺りが、欠けているのが分かります。
(※この後、この部分を「ひだ先」と呼ぶこととします。)
また、軸を回転させていくと、別のひだ先でも小さく欠けているのが確認できました。
こうした「欠けている部分」が紙と当たる際に、ガリガリとした書き心地になっていると考えられます。
また、ペン先は、ナイフで鉛筆を削った時のように、比較的大きな平面でカットしたようになっています。
このため、平面同士の交線が紙と当たった時に、摩擦感が強くなっていると考えられます。
また、ペン先を正面から見てみると…
こんな感じになっています。
ペン先のひだの形が確認でき、また、ペン先の中心が盛り上がっているのが分かります。
第1段階 ペン先を平らに削る
まずは、ひだ先が欠けている部分を全部削り落とします。
800番の耐水ペーパーを用意して、その一部に水をたらし、ペン先を研磨します。
哲磋工房様の動画に従い、ペンを耐水ペーパーに垂直に立て、回すように研磨します。
シャリシャリこすって、見てみると…。
ペン先は、あっさり真っ平になりました。
ただし、ひだ先の欠けがまだ残ってますので、もうちょっと削る必要がありますね。
ここまで削って、この段階はほぼ完成です。
このペン先を正面から見ると、こんな感じ。
ペン先が真っ平になっていて、ひだの断面が良く分かります。
第2段階 ひだ先を浅い角度でカットする
次の段階では、ひだ先を斜めに削ります。
筆記するときにひだ先の峰の部分が紙に当たらないよう、浅い角度でひだ先を削ります。
使用する耐水ペーパーは2000番。
ひだを傷めないよう、縦方向でシャリシャリします。
ここで削り過ぎると一段階前に戻ることになりますので、ルーペ等で確認しながら慎重に進めます。
軽めに削って、ペン先の様子を見てみますと…
まだまだ途中ですが、割と良い感じです。
ただし、角度はもう少し浅くても良いかも知れません。
この時のペン先を正面から見ると、こんな感じです。
ひだ先の削りが足りないため、ペン先の平面部分が歯車のようになっています。
このペン先の平面が丸になるまで削るのが、この段階のゴールです。
第2段階のゴールがこんな感じです。
この時のペン先を正面から見ると…
ちょっといびつではありますが、歯車のようなガタガタがほぼなくなり、ほぼ丸になっています。
そして、このペン先の平面部分の縁が、ペンと紙との接触ポイントになります。
第2段階の終了時点では、この接触ポイントが鋭角になってますので、次はここを滑らかにする作業となります。
第3段階 紙との接触ポイントを滑らかにする
使用する耐水ペーパーは、そのまま2000番。
第2段階よりは少し角度高めにして、コシコシします。
少しコシコシしては少しペンを回し、これを繰り返して少しずつ角度を高くしていきます。
この辺りの具体的なやり方は、ぜひ哲磋工房様の動画をご覧下さい。
で、この段階のゴールがこんな感じです。
だいぶ角が取れたのではないでしょうか。
ペン先を正面から見ると…
先端の平面部分が無くなり、全体的に角が取れて丸くなってます。
第4段階 仕上げ
第3段階で形が整いましたので、後は試し書きをしつつ、ガリガリするところを軽く2000番でコシコシします。
書いてみてガリガリするところが無くなりましたら、最後の仕上げ。
4000番の研磨フィルムで、軽くなでるようにコシコシしていきます。
最終形としては、こんな感じになりました。
ペン先の先端部分が、ツヤツヤのピカピカになってます。
ペン先を正面から見た画像で光の点が丸く並んでいますが、これはカメラのLEDライトが反射したものです。
結構、きれいに仕上がりました。
ペン先研磨の結果
ペン先を研磨した結果、書き心地は改善しました。
ヌルヌルにはなっていないものの、ガリガリするところは無くなり、摩擦感も減少しました。
これ以上研磨すると線幅が太くなるリスクもありますので、今回はここで終わりにしました。
このペンを使った書写で、研磨前と研磨後を比較すると、下の画像のようになります。
(左が研磨前/右が研磨後です)
(字が汚いのは、本当にすみません。)
割と同じ程度の線幅になっているかと思います。
最後に…
まずは、ガラスペンのペン先研磨について詳細な情報を公開されている哲磋工房様に、心から感謝申し上げます。
(その後、哲磋工房様からは、ペン先調整WSにて直接色々とお教え頂きました。
本当にどうもありがとうございました。)
また、この記事では特にご紹介しておりませんが、実際に研磨する際には、ペン先の状況確認のためルーペ等が必要となります。
(哲磋工房様のおすすめは、カール・ツァイス社製の10倍のルーペとのことです。)
尚、この記事をご覧いただいた方が研磨にトライされる場合、国内のガラス工房様や作家様によるガラスペンは避けて下さいますようお願い申し上げます。
(自分で削るのはリスクが高いですし、何よりもったいないですからね。)
ちなみに、今回のペン先研磨で使用した「ピエール・カルダン Duo3」というガラスペン。
冒頭でリンク先を掲載した、哲磋工房様のインスタグラムの動画でも使用されています。
当店でもお取り扱いしておりますので、ご興味の方はぜひご覧下さい。
(今後は、当店で研磨した上で販売することも検討したいと思います。)