“復活シリーズ”第一弾
本ブログの中の人とペーパーブランクスとの付き合いは、大体10年くらいになります。
その間ずっと続いているシリーズもあれば、当然、消えてしまうシリーズもあり。
はたまた、「惜しまれつつ消えたシリーズが〇年振りに復活!」ということもあります。
今回取り上げるのは、そうした“復活したシリーズ”の第一弾「グーテンベルク」です。
まずは、現在の「グーテンベルク」
では、まず現在販売中の「グーテンベルク」シリーズを見ていきましょう。
表紙の上下の部分は、経年で革が日焼けしたような風合い。
整然と並んだ古い印刷書体と、それを取り囲む色鮮やかな装飾。
古書の雰囲気を漂わせながら、華やかさと神秘性を感じさせるデザインです。
デザインのモチーフとなったのは、活版印刷によって印刷された世界初の聖書、「グーテンベルク聖書」。
1455年頃、マインツのヨハネス・グーテンベルクによって印刷されたものです。
現在では、完全、不完全合わせて48部が本の形で現存しており、アジアでは慶応義塾大学に1部所蔵されています。
(以下のリンク先(外部サイト)より、グーテンベルク聖書の実物をご覧いただけます。)
三田所蔵 貴重書:グーテンベルク42行聖書 | 慶應義塾大学メディアセンター
グーテンベルク聖書は15世紀にドイツ・マインツの金細工職人ヨハン・グーテンベルク(Johann Gutenberg)が印刷した西洋初の活版印刷の聖書です…
リンク先の実物をご覧頂けると一目瞭然ですが。
このシリーズの表紙は、グーテンベルク聖書の表紙をモチーフにしたのではありません。
中身のページの活字と挿絵を表紙に持ってきたものとなっています。
ちなみに裏表紙はこんな感じ。
表表紙と同じ図柄を、少し位置を変えて配置しています。
表紙の開閉部分が無い分、裏表紙の方が、より元のデザインを楽しめる感じでしょうか。
このクラシカルな書体は
1455年の活版印刷という貴重なサンプルなので、字体をもうちょっと良く見て見ましょう。
カリグラフィー等で目にする字にも近い印象。
細かな文字が、ぎっしり整然と並んでいて、文化や技術の高さを感じさせますね。
この字体は、「ブラックレター(blackletter)」という書体の中の一つ。
「テクストゥール(Textur)」というもので、グーテンベルク聖書のために、ヨハネス・グーテンベルクによって作られたもの。
装飾的な書体が特徴とのことです。
華やかで神秘的な装飾は
グーテンベルク聖書の特徴とも言える華やかな装飾。
実は、これは活版印刷で作られたものではないそうです。
言われてみれば、まぁ当然なのですが。
印刷されているのは黒色ブラックレターの本文のみ。
頭文字や欄外の装飾は、顧客の好みに応じて印刷後に描き加えられたものだそうです。
この「グーテンベルク」シリーズのデザインでは、Gisela Maschmann の手による模写を採用。
ベルリン王立図書館所蔵の「グーテンベルク聖書」の一巻を細密画のモデルとしているとのこと。
先ほどリンクを貼った慶應義塾大学に所蔵されているものとは、別バージョンになります。
約10年前の旧バージョンでは
では、引き続いて、今度は約10年前に販売されていた旧版を見てみましょう。
以前のバージョンは、新書版に近いスリムフォーマットで展開されていました。
デザインは、「パラボル」と「ジェネシス」の二種類。
もう旧版をご覧になる機会はあまりないと思います。
せっかくなので、もう少し画像をご覧頂こうと思います。
旧版 パラボル
まずは「パラボル」から。
左の画像が表表紙、右が裏表紙となります。
デザインのベースは、新版のグーテンベルクと同じ。
ただ、全体的な色味は、新版に比べ茶色味が薄く、白基調の印象が強くなっています。
このため、旧版の方が明るい印象で、装飾の色合いも鮮やかな雰囲気です。
また、旧版は縦長のフォーマットのため、テキストは1段のみ。
文字に比べ装飾の割合が高い感じになってます。
ディテールの1枚目は、表表紙の上の方。
金色の部分の光沢の他、Pの飾り文字など、色鮮やかできれいです。
また、よく見ると、ベースの部分は革を模したものではなさそうです。
(新版では革をイメージした加工となっています。)
漆喰か木板にベースの色を塗ったものを、ベースのイメージとしている印象です。
また、マグネット式カバーのフタの部分が、斜めに曲線を描いているのも良い感じです。
ディテールの2枚目は、表表紙の下の方。
光沢感のあるターコイズなど、挿絵の鮮やかさが印象的です。
また、左端に描かれているのはドラゴンでしょうか。
神秘的で印象的な図柄です。
旧版 ジェネシス
次いで「ジェネシス」。
こちらのデザイン、海外では新版として復活しているようなのですが、日本には未だ入ってきていません。
薄くグリーンがかった色調。
ベースのイメージは、旧版パラボルと同様、漆喰か木版のようです。
また、裏表紙の装飾として、ツルや孔雀が描かれているのも、エキゾチックで不思議な雰囲気です。
ディテールの1枚目は、表表紙の上の方。
左側、縦の青いラインが特徴ですね。
中に並んでいる丸いところには、宗教画やタロットカードのような絵が描かれてます。
ディテールの2枚目は、表表紙の下の方。
描かれているのは、熱帯の動植物を思わせるような、色鮮やかな鳥や花。
「ジェネシス(創世記)」故に、多様な生き物が描かれているのかもしれません。
新版で変わったところは
まずは、サイズ、フォーマットの変化ですね。
旧版が新書版に近い「スリムフォーマット」。
一方、新版はハードカバーの単行本に近い「ミディフォーマット」。
売れ行き的にはスリムよりミディの方が人気がありますので、この変化はまぁ仕方ないですね。
(個人的には、かさばらないスリムも好きなのですが。)
で、それにより横幅が広くなったことから、テキスト2段組みのデザインに変更されてます。
また、マグネット式カバーの“フタ”も、シンプルな直線スタイルになっています。
そして、そこから先は、デザインのテイストとか方向性の変化。
ここは、「神秘性・美しさ」から「アンティーク感」に方向性が変わったように感じます。
ペーパーブランクスでは明るいデザインより、重厚なデザインの方が売れる傾向がありますので、この変更はビジネス的には正しいのだと思います。
しかし、白基調の美しいノートは実は意外に珍しいので、個人的には以前のデザインを踏襲してほしかったと思っています。
ま、それが難しかったとしても、現在海外で販売されている「ジェネシス/ミディ」については、ぜひ日本にも導入してほしいですね。
期待して、お待ちしております!!