インクの“フラッシュ”って?
皆さん「レッドフラッシュ」や「グリーンフラッシュ」という言葉を、聞いたことありますでしょうか?
万年筆・つけペン用のインクの特徴や魅力を語る際に、時々耳にする表現ですよね。
これは、筆記線の一部やインクを塗った箇所の縁に、金属のような光沢感が生じる現象。
生じる光沢感の色によって「レッド~」とか「グリーン~」と呼ぶようです。
ではまず、何はともあれ実際のフラッシュを見てみましょう。
これは「レッドフラッシュ」の例。
インクは「ピエール・カルダン/Sound of Music ブラームス ポート ブルー」。
用紙は「ノウト/ぬり絵じゃないぬりたくり絵 ポストカード」です。
インクを筆で塗った際の筆跡の縁に、ところどころピンク色の光沢感が現れています。
続いてこちらは「グリーンフラッシュ」の例。
インクは、上と同じシリーズの「ヴェルディ バイオレット レッド」。
インクを多く塗ったところに、グリーンの光沢感が良く出ています。
光沢の色がインクの色とは異なる点や、現れ方が不確定な点が面白いところ。
またラメ入りインクとは違い、インク自体を見てもフラッシュするか分からないのも不思議です。
フラッシュが現れるかは“紙”次第?
先ほどご紹介したフラッシュが出るインク。
ちょっと楽しみにして、何回か書写で使ってみたのですが、一向にフラッシュは現れません。
Favorite Note 公式ツイッター
ノウトのぬりたくり絵シリーズでは簡単に出たフラッシュが、ペーパーブランクスのノートでは全く出ない。
これはインクの吸収の良い、ペーパーブランクスの用紙のせいでは?
…と、言うことで、色々な紙でフラッシュの現れ方を検証してみることにしました。
たくさんの種類の紙を(手軽に)調べたい!
こうしたニーズにピッタリなのが、kamiterior のメモパッドシリーズ。
5種類の紙を一つにまとめたメモパッドが4種類。
これで、計20種類の紙について調べることができます。
以下、画像の左から順にご説明します。
1)J-laid paper(レイド紙)
横方向(または縦方向)に微妙な薄厚の畝(簀の目(すのめ))が入った紙。
針金で作られた漉き桁で紙を漉くと、紙に微妙な薄厚の差が生じ、簀の目状の模様となります。
このような紙をレイド紙と呼び、高級ノートや便箋等で使われています。
(ペーパーブランクスのノートもレイド紙です。)
- Lライティングペーパー(ホワイト)
- OKフールス(淡クリーム)
- サンレイド(乳白)
- スピカレイドボンド
- エアメールボンド(ナチュラル)
2)paper treasure(上質紙)
パルプ100%で作られ、表面にコーティング加工が施されていない紙。
コーティングされていないため表面の光沢やツヤが少なく、少し凹凸のある手触りです。
色が沈むのでカラー印刷には不向き。
筆記性に優れ、ノートや文字中心の印刷物等、広く使われています。
- OKプリンス上質
- しらおい
- キンマリSW
- 金菱FSC-MX
- 雷鳥上質
3)paper treasure(書籍用紙)
文庫本や小説など、書籍の本文用紙として使用される紙。
目に優しい、淡い黄色みがかった色合い。
インクが染み込みやすく、長期保存に向いています。
- ソリスト(N)
- OKライトクリーム
- ラフ淡クリームセンダイ
- ニューシフォンクリーム
- メヌエットライトC
4)for pencil(鉛筆用)
基本的には表面加工がされておらず、適度なざらつきがある紙となります。
- 特白画学
- ダイヤバルキー
- オペラクリアマックス
- OCR用紙
- スライト
こんな感じで調べました!
ぬりたくり絵でのフラッシュを見てみますと、インクをたくさん載せてそれが乾いていくとき、なかなか乾かずに残っている部分にフラッシュが現れやすい模様です。
これを踏まえ、インクフラッシュ用のテストパターンを作成しました。
1)長方形・円エリア
インクの液面が分かるくらい、たくさんインクを載せます
(※このためインクの吸収の良い紙では、にじみが発生します)
2)極太線エリア
ペン先が太めのガラスペンにインクをたっぷりつけて、極太線を描きます
3)細線エリア
ペン先が中字~細字のガラスペンで、普通に線を描きます
1)で強めにフラッシュを出し、2)3)で普通に書いた場合のフラッシュの有無を確認するイメージです。
では、早速結果を見ていきましょう!
以降の結果画像は、左側が普通に正面から撮影した画像。
右側は、カメラの反対側から光を当て、フラッシュ部分が光るように撮影した画像となります。
結果発表:1)J-laid paper(レイド紙)
1-A)Lライティングペーパー(ホワイト)
高品質なノートで知られる、ライフ株式会社のノートの多くに採用されている用紙。
長方形・円だけでなく、極太線でもフラッシュが現れています。
1-B)OKフールス(淡クリーム)
鵬紙業によって開発された日本初の「フールス紙」、株式会社エムディーエスの大学ノート等に採用されています。
インクの吸収が良く、長方形・円や極太線でにじみが発生しています。
フラッシュは見られません。
1-C)サンレイド(乳白)
にじみはあまり見られませんが、フラッシュも控えめです。
長方形・円の縁近くでフラッシュが見られます。
1-D)スピカレイドボンド
大きなにじみが見られ、フラッシュは現れていません。
1-E)エアメールボンド(ナチュラル)
「ブラームス ポート ブルー」では、にじみがあまり見られず、長方形・円の縁でフラッシュが現れています。
「ヴェルディ バイオレット レッド」では、大きくにじみ、フラッシュは見られません。
結果発表:2)paper treasure(上質紙)
2-A)OKプリンス上質
大きなにじみが見られます。
「ブラームス ポート ブルー」の長方形や極太線、細線の縁の一部に、僅かにフラッシュが現れています。
2-B)しらおい
それほど大きくはありませんが、にじみが見られます。
フラッシュは現れていません。
2-C)キンマリSW
それほど大きくはありませんが、にじみが見られます。
フラッシュは現れていません。
2-D)金菱FSC-MX
大きなにじみが見られ、フラッシュは現れていません。
2-E)雷鳥上質
大きなにじみが見られ、フラッシュは現れていません。
つづきは後編で
さて、ここまでで今回の調査対象の紙20種類のうち、半分の10種類の確認を終えました。
これまで見た範囲では、以下のような感じでしょうか。
- インクの吸収が良く、にじみが大きな紙では、フラッシュは現れない
- レイド紙、上質紙といった用紙の種類は、フラッシュにあまり関係ない
後編では、残りの10種類(書籍用紙5種類、for pencil 5種類)を検証。
また、フラッシュの見られた紙について、その現れ方をもう少し大きな画像で見てみようと思います。
インクの“フラッシュ”と紙との相性を調べるこの企画。前編では「1)J-laid paper」「2)paper treasure(上質紙)」について、見てみました。引き続いて、後編では「3)paper treasure(書籍用紙)」「[…]
検証で使用した紙、インクについて
前編でテストした紙のいつくかについては、使用した商品をお取り扱いしています。
また、検証で使用したインクについてもお取り扱いしています。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。