“ガラスペンの性能検証”って?
万年筆インクのブームを追い風に、最近人気のガラスペン。
ガラスという素材本来の美しさに加え、シンプルなものから凝ったものまで多様なデザインも楽しめます。
加えて、複数のインクを手軽に使い分けられる便利さもあり、今後も多くの人を虜にしていきそうです。
ただその一方で、ガラスペンの多くは手作りであるため、一本一本には個体差があます。
また、国内外の工房で独自に作られているため、性能を比較する基準も無い(?)ように思えます。
という訳で、見た目からは分からない、筆記具としての性能的なところを調べてみようというのが、この企画です。
ネット通販における“線幅(字幅)”表記の苦しい事情
本ブログの中の人は、ネットショップ「Favorite Note」を運営しています。
ガラスペンは2021年から取り扱っていますが、この“線幅”にはちょっと苦労しています。
万年筆であれば、M、F、EFなどのメーカー表記がありますので、それを使えばOK。
しかし、ガラスペンの場合は、メーカー・代理店情報に“線幅”が無いことも多々あります。
また、試し書きしてみると、個体差が思った以上に大きいこともあります。
このためショップでは、独自に試し書きをして線幅を調べたり、個体差を考慮して表記に幅を持たせたりしています。
(お客様の立場では、表記に幅があるのは不親切だと分かっているのですが…)
今回の検証での比較対象
今回の検証では、「Favorite Note」で取り扱っている以下のガラスペンについて調べました。
- ピエール・カルダン / ガラスペン Duo3 × 3本
- エルバン / ガラスペン つむぎ × 3本
- the NEON / シンプルガラスペン 虹色 × 3本
- 伊勢硝子 / ガラスペン × 3本
また、比較対象としては、人気や入手しやすさから以下を選びました。
- ラミー / サファリ 万年筆 M(中字)
- ラミー / サファリ 万年筆 F(細字)
- ラミー / サファリ 万年筆 EF(極細)
- 【参考】セーラー万年筆 / hocoro 細字
- 【参考】セーラー万年筆 / hocoro 1.0mm幅
ラミー/サファリは、ドイツの筆記具メーカー LAMYによる、世界的なロングセラーモデル。
別の記事でラミー/サファリ自体の線幅比較をしてますので、当ブログではお馴染みですね。
ラミー サファリ 万年筆 のペン先の太さは3種類カジュアルなデザイン、ポップな色使いが人気の「ラミー サファリ 万年筆」。これで万年筆デビューをする方や、「いや、むしろこれ一筋!」 という方も、大勢いらっしゃるかと思います。[…]
セーラー万年筆/hocoroは、セーラー万年筆のペン先を使用したつけペン。
一般的に、海外製より日本製の方が線幅が細いと言われますので、ラミーとの比較という意味でピックアップしました。
ペン先の違いを見て見ましょう
では、早速、まずはペン先の違いを見て見ましょう。
画像は左から…
1)「ピエール・カルダン/Duo3」
2)「エルバン/つむぎ」
3)「the NEON/虹色」
4)「伊勢硝子」
となっています。
形としては、「エルバン/つむぎ」と「伊勢硝子」が、ペン先の中ほどに膨らみがあり、溝がストレートな同じタイプ。
「the NEON/虹色」は、先端にかけてスッと細くなり、溝がストレートという形。
「ピエール・カルダン/Duo3」は、ペン先が細く長く、溝にねじりが入っている、特徴的な形となっています。
ただし、ペン先を見ただけでは、線幅の違いまでは分かりませんね。
比較方法と比較対象の線幅(字幅)
ラミーサファリの線幅比較の記事でも述べていますが、単純に筆記線の幅を比較しても、差が微妙すぎて殆ど分かりません。
このため、同程度の大きさの文字を書いて、線の詰まり具合、文字のつぶれ具合で比較することにいたします。
今回は、そこそこ画数があり、太い線幅ではつぶれそうな文字ということで、「天壌無窮」と「光輝燦然」という四字熟語を選びました。
また、使用した用紙は入手しやすいブロックロディア。
方眼は5mm罫です。
インクはパイロット iroshizuku「天色」を使用しました。
ちなみに、今回の比較対象そのものを比較すると…
ラミー/サファリの線幅は確かに、M(中字)>F(細字)>EF(極細)の順となっています。
ただし、M(中字)とF(細字)の差に比べると、F(細字)とEF(極細)の差は小さいように感じます。
また、hocoro 1.0mm幅は、カリグラフィータイプのため、太い線と細い線が混在。
太い線の部分はラミー/サファリMより太くなっています。
hocoro 細字は、ラミー/サファリ EF(極細)よりも、さらに細い印象。
よく言われるように、海外製よりも日本製の方が、同じ線幅表記でも一段階細い印象です。
以降では、いよいよ各ガラスペンの線幅比較を見ていきます。
ピエール・カルダン / Duo3
ガラスペンは、基本的にインクの付け方次第で線幅が増減します。
このため、インクを付けた後の書き出しの文字で、線幅が太くなる傾向があります。
Duo3の結果を見ると、書き出し直後の「天壌無窮」で、線が少し太めになる傾向が見られます。
ただし、それ以降の「光輝燦然」では線幅が安定。
サンプルごとに詳しく見ますと、サンプル1はEF(極細)に近い線幅。
サンプル3はEF(極細)に近いがさらに少し細め。
サンプル2はF(細字)に近い印象です。
3本のサンプルから考えますと、Duo3の線幅は、概ねEF(極細)前後。
サンプル2など、少し太くなる場合に、E(細字)前後となる印象です。
また、3本のサンプルについて、線幅の個体差は比較的少ない印象です。
エルバン / つむぎ
「天壌無窮」、「光輝燦然」での線幅の差はあまりないように感じます。
線幅は、サンプル2、サンプル3で概ねM(中字)程度。
サンプル1など、少し細い場合にF(細字)に近くなるという印象です。
また、3本のサンプルについて、線幅の個体差は比較的少ないように感じます。
つむぎで筆記した文字を見ると、インクが薄い箇所が何カ所か見られます。
これは筆記している際、紙に接していた溝のインクを使い果たしてしまったことによるものです。
(ペン先を回転して別の溝のインクを使うので、特に問題無いのですが…。)
個人的な感想としては、この際のインクの出方が、徐々に少なくなるのではなく、急に出なくなるという印象です。
the NEON / 虹色
線がくっついたり、文字がつぶれている箇所が少なく、すっきりとした文字の印象です。
ラミーとの比較としては、基本EF(極細)に近く、少し太い場合にF(細字)に近付く印象です。
また、3本のサンプルについて、線幅の個体差は比較的少ないように感じます。
伊勢硝子
3つのサンプルとも線幅は太く、概ねM(中字)かそれ以上という印象です。
また、今回の3本については、線幅の個体差はあまり大きくない印象です。
ただし、代理店からの事前情報では、このガラスペン線幅は細字前後。
このため今回の結果と合わせると、線幅は細字前後~太字前後となる可能性があり、結果個体差は大きい可能性があります。
結果を整理すると
以上の結果を整理すると、大体以下の通りとなります。
どの線幅のペンを選ぶかはお好み次第ですが、私個人の場合は、大体こんな方針で考えています。
- 色々な用途で使いたい場合は、線幅の細いペン。画数の多い文字も書きやすく、使い勝手が良いと思います。
- インクの色を楽しみたい場合は、線幅の太いペン。色が見やすく濃淡も出やすいので、よりインクを楽しめる気がします。
本記事は、数多くあるガラスペンの中で、ごくごく一部をテストしただけではありますが、何かのご参考になれば幸いです。
また、次回の記事では、ガラスペンの筆記量についてテスト結果をアップする予定です。
どうぞご期待ください。
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